広告依存率とは:新規獲得のうち広告経由がどれだけかと、下げるための3つの柱
決算書から取れるのは広告宣伝費を売上高で割った比率で、新規獲得のうち広告経由が何割かではありません。上場企業の資料157本を検索して、獲得の比率を数値で出していたのは1社でした。出し方と、数字が取れないときの4つの代わりを整理しました。
読む広告費を削減すると、費用と利益はその月のうちに動き、売上は遅れて動きます。広告費を絞ること自体は、利益を守るうえで自然な判断です。遅れを決めるのは、配信の学習では結果の件数、リターゲティングでは名簿の有効期間です。ブランド側は、遅れの長さを測った資料が見当たらず、効果を評価する窓の長さの話になります。この記事は、仕組み・順番・手順を整理します。
削った広告費が新規の獲得と既存顧客のどちらから抜けているかは、顧客資産化診断で獲得と継続に分解できます(7問・約3分)。
広告費の削減が売上に与える影響とは、費用を下げてから、施策ごとに異なる遅れをともなって現れる売上の変化のことです。削減額はその月の損益計算書に出ますが、売上への影響は同じ月には出そろいません。水準の見方は広告宣伝費率の記事で扱っています。
先に、書いていないことを置きます。「何%減らすと何%落ちる」を結ぶ数字は、今回読んだ媒体各社のヘルプ、Binet & Fieldの報告書、上場企業の開示のどれにもありませんでした。扱うのは、どの指標がどの順番で、何を単位に動くかという形のほうです。
遅れをつくるのは3つ。配信システムの学習、リターゲティングの母集団、購入前にブランドを思い出してもらう働きです。前の2つは管理画面の中、3つめは外で動きます。
3つは別々の時計で進みます。1か月後に売上が落ちていないことは、影響が無かったことを意味しません。逆に、落ちていても削減だけが原因とはかぎりません。
ここに挙げた日数・件数と画面上の呼び方は、2026年9月24日に各社のヘルプで確認した時点のものです。媒体の仕様は変わるため、実際に下げる前に同じページを開き直してください。
Google 広告のヘルプ「キャンペーンの学習期間の長さと、それに影響を与える要因」は、ステータスが「学習中」になる理由として、4項目を挙げています(ページ上の表記は「次の 3 つ」)。新しい戦略、設定の変更、構成要素の変更(キャンペーン・広告グループ・キーワードの追加や削除)、広告グループの目標値の変更です。4項目めは「ショッピング キャンペーンのステータスが『学習中』になることがあります」と種類を限っています。広告グループやキーワードを外して下げる操作は、このうち構成要素の変更に当たります。
長さは、同じページがこう書いています。
新しい目標に合わせて入札戦略が調整されるまでに、コンバージョン イベントが 50 回程度発生するか、コンバージョン サイクルが 3 回程度発生することがあります。ただし、存在するコンバージョン データの量によっては短縮される場合があります。
── Google 広告 ヘルプ「キャンペーンの学習期間の長さと、それに影響を与える要因」(2026年9月24日取得)
コンバージョン サイクルは、クリックからコンバージョンまでの時間を指す同社ヘルプの言葉です。目安は日数ではなく、件数と周回数です。
Meta広告は同じものを「情報収集期間」と呼びます。ヘルプ「情報収集期間について」は、終わるのは「通常、広告セットに最後に大きな編集を加えてから1週間以内に約50件の結果を獲得した後」で、その間は「通常、CPAは高くなります」としています。削減直後の数字には、学習し直している最中の数字が混ざります。
リターゲティングの配信先は、サイトを訪れた人の名簿です。入るのは訪問から数秒以内、出るのは期間が切れたとき。入口を細くしても、名簿はその日には縮みません。
Google 広告のヘルプ「データ セグメントの仕組み」は、タグのあるページを見た人は「数秒以内にデータ セグメントに追加されます」としています。新規リストは「ユーザーが完全に登録されるまで 48~72 時間ほどかかることがあります」。保持する期間が有効期間で、ディスプレイ ネットワークとGoogle検索は既定30日間・最長540日間。切れると削除され、再訪でカウントが戻ります。
配信の条件も同じページにあります。ディスプレイ ネットワーク・Google検索・YouTubeのいずれをターゲットにする場合も「過去 30 日間のアクティブ ユーザー数が 100 人以上であることが必要です」。名簿が小さくなりすぎると、この要件を割ります。
Meta広告のヘルプ「ウェブサイトカスタムオーディエンスを作成する」は「作成した時点から追加が始まります(バックフィルは行われません)」と書いています。縮んだ名簿を戻す道は、訪問を積み直すこと1本です。
Les Binet氏とPeter Field氏の報告書「Media in Focus」(IPA、2017年6月)は、英国のIPA Databank(1998年以降の営利事例497件と、2014・2016年応募の118件)の分析です。刈り取りの効果は6か月以内で最大の売上反応を生む傾向があるが、速く減衰する傾向がある。ブランドの効果は短期では小さいが減衰がゆるやかで、繰り返し接触すると売上の土台が上がることがある(PDF p.8、原文[2])。
同報告書が6か月という線を引くのは、効果を評価する窓の長さについてです。6か月より長い期間で評価した事例を長期と定義し、長期の効果が短期の効果を上回りはじめるのは6か月後だとしています(PDF p.6、原文[1])。下げてから売上が動くまでの遅れ、という意味の6か月ではありません。
IPAは英国の広告業界団体で(PDF p.4)、DatabankはそのIPA Effectiveness Awardsへの応募事例の集まりです。応募事例が、応募していないキャンペーンより長期寄りに偏っている可能性は、同報告書自身が示唆しています(PDF p.32)。数字ではなく、長短の向きだけを借ります。
3つの時計に会計の数字を足して、1枚に並べます。
見る場所は行ごとに違います。学習はGoogle 広告の入札戦略のステータスとMeta広告の[配信]列、母集団はオーディエンスのサイズと配信の可否。ブランド側は指名検索です。
指名検索(ブランド名や商品名を検索語に入れた検索)は、広告の管理画面ではなく検索の側で見る指標です。見る価値があるのは、広告が検索を生む部分があるからです。Binet & Fieldの報告書(英国のIPA Databankの分析)は、テレビ広告がGoogleの検索クエリを生むと書いています。同じページには、短期の効果を、そのまま長期の効果へと確かなかたちで引き延ばすことはできない、とも書かれています(PDF p.41、原文[3])。
ここからは私たちの見方です。指名検索の件数は、いま広告を出したから増える数字ではなく、何人が名前を覚えたかの残高に近いものです。下げる前に水準を記録します。すでに下げたあとでも、いまの水準を起点に置き直せます。
先に立場を書きます。私たちは、広告費を止めるより既存顧客側へ付け替える提案をする立場です。その前提で、下げ方の順番を書きます。
Meta広告のヘルプ「大幅な編集と情報収集期間」は、予算額の変更が「大幅な編集」かを度合いで判断するとし、例をこう置いています。
例えば、予算を$100から$101に増やした程度では、1つ以上の広告セットが再び情報収集期間に入る可能性はほとんどありません。しかし、予算を$100から$1,000に変更した場合は、1つ以上の広告セットが再び情報収集期間に入る可能性が高くなります。
── Meta ビジネスヘルプセンター「大幅な編集と情報収集期間」(2026年9月24日取得)
この例は増額の向きです。度合いで判定されるため、1回の変更幅を小さくする余地はあります。ただし同社ヘルプ「情報収集期間について」は頻繁な予算変更も再突入の要因に挙げており、回数を増やせば安全という話ではありません。減額側の度合いは原文の例の外で、ここからは私たちの読み方です。
Google 広告では、目標値を変えても「学習中」に戻ることはありません。ただし同社ヘルプは、ショッピング キャンペーンでは広告グループの目標値変更で「学習中」になることがある、と例外を置いています。構成要素を外すほうは、学習中になる理由に挙がっています。目標値で絞るのと構成要素を外すのとでは、扱いが違います。
下げる対象を並べ替え、優先度の低いところから他へ移す形です。KIYOラーニングの開示では、その軸が講座の単価でした。KIYOラーニングの「2025年12月期 決算説明資料」(2026年9月18日取得)は、第4四半期に「低単価な講座への広告投資を抑えたことで広告効率が高まり大幅な利益増加につながった」としています。同じページに、新規有料会員数は低下したが顧客単価が上昇し、現金ベース売上高は前年同期比6.1%増とあります(PDF p.18)。通期では広告宣伝費率が前年比4.8ポイント改善(p.23)。外す前に、単価か継続で件数の減りを取り返せる設計かを確かめます。
なお、効率の重視は額を落とすことと同じではありません。ベースフードは「2026年2月期 決算短信」(PDF p.4。2026年9月18日取得)で自社ECの「ROIを重視した規律ある広告運用」を挙げつつ、「有価証券報告書」2026年2月期(PDF p.76。同日取得)の注記では広告宣伝費が2,848,037千円から3,177,499千円へ増えています。
何を見たら戻すのかを、下げる前に文字にします。決めていないと、売上が落ちても「まだ様子を見る」に、落ちていなくても「もっと下げられる」に。下げたあとに書き始めても遅くはありません。
RIZAPグループの「有価証券報告書」2026年3月期(PDF p.18・p.97。2026年9月18日取得)は、chocoZAP事業の上期に、出店抑制・広告宣伝投資の最適化・店舗運営の内製化とDX化の3つを徹底したと書いています。結果、1店舗あたりの損益分岐点が大幅に低下。下期から投資を再開したところ会員数が増加傾向に転じた、と続きます(連結の広告宣伝費及び販売促進費は17,875百万円から10,850百万円)。開示は「大幅に低下」までで、線は自社で引きます。
自社に持ち込めるのは、戻す条件の種類を先に決める形のほうです。獲得単価、継続率、指名検索から1つか2つ選び、その線を割ったら戻すと書きます。
Google 広告のヘルプ「Google の入札アルゴリズムによる学習の仕組み」は、成果を評価するのは「最低でもコンバージョン サイクル 1 周分」が経ってからだとしています。目標値を大きく変えたあとは「稀なことですが、コンバージョン サイクル 1~2 周程度はパフォーマンスが安定しない」こともある、とも。ブランド側はこれより長い窓で見ます。ROMI(費用に対する利益の比率)に着目することが予算の削減を後押しする、という指摘もあります(Binet & Field、英国のIPA Databankの分析。PDF p.38)。同報告書が予算の判断に使っているESOVの計算式はシェアオブボイスの記事にあります。
窓の中での見え方も共有します。プレミアアンチエイジングの「2025年7月期 決算説明資料」(PDF p.6。2026年9月18日取得)は、売上高が20.6%減った期に営業利益が343.8%増えたと書いています。同期の「有価証券報告書」(p.26・p.28)には、広告宣伝費3,924百万円・前期比38.3%減、広告宣伝費率31.2%→24.3%という実数があります。翌期の方針は「全社売上高は、底打ち・反転を目指す ブランドへの投資拡大に伴い、営業利益は減少」(説明資料 p.4)。利益が先に出て、戻す局面では利益が下がる。この順番を共有すると、あとの説明が揃います。
「広告費を何%減らすと売上が何%落ちる」を結ぶ数字は、今回読んだ資料の範囲にはありませんでした。落ちる時期はひとつにまとまらず、指標ごとに単位が違います。Google 広告のヘルプは学習について「コンバージョン イベントが 50 回程度発生するか、コンバージョン サイクルが 3 回程度発生することがあります」。Meta広告のヘルプは「通常、広告セットに最後に大きな編集を加えてから1週間以内に約50件の結果を獲得した後」に情報収集期間が終わるとしています(いずれも2026年9月24日取得)。
母集団は有効期間(既定30日間・最長540日間)ぶん遅れて縮みます。Binet & Field「Media in Focus」(IPA、2017年6月。英国のIPA Databankの分析。PDF p.6)は6か月より長い期間で評価した事例を長期と定義しますが、これは窓の長さで、削減日からの経過時間ではありません。
母集団が小さくなると、配信の要件を割ることがあります。Google 広告のヘルプ「データ セグメントの仕組み」は、3つの配信面に同じ条件を置いています。ディスプレイ ネットワーク・Google検索・YouTubeのいずれをターゲットにする場合も「過去 30 日間のアクティブ ユーザー数が 100 人以上であることが必要です」(2026年9月24日取得)。
Meta広告のウェブサイトカスタムオーディエンスにバックフィルは行われないため、縮んだ母集団は訪問を積み直すしかありません(同社ヘルプ、2026年9月24日取得)。
変更の度合いによります。Meta ビジネスヘルプセンター「大幅な編集と情報収集期間」は、予算を$100から$101に増やした程度なら再び情報収集期間に入る可能性は低く、$100から$1,000なら高くなる、という例を挙げています(2026年9月24日取得)。
同社ヘルプ「情報収集期間について」は、頻繁な予算変更も再突入の要因に挙げています。Google 広告では目標値の変更で「学習中」に戻ることはありませんが、ショッピング キャンペーンでは広告グループの目標値変更で「学習中」になることがあり、キーワードの削除も理由に挙がっています(2026年9月24日取得)。
戻す条件を先に書けるときです。獲得単価、継続率、指名検索のどれを見て、どの線を割ったら戻すのかを決めてから下げると、下げたあとの数字を読む基準が残ります。加えて、止めるのではなく付け替える先(既存顧客側の施策)を決めてあること。私たちはこの順番で提案しています。同じ形の実例は、本文の「戻す条件を、下げる前に決めて書いておく」(RIZAPグループ)にあります。
利益の改善として書き、売上の減少とは別に説明している例があります。プレミアアンチエイジングの「2025年7月期 決算説明資料」(PDF p.6。2026年9月18日取得)は、営業利益が139百万円から617百万円になった理由を「新規獲得の広告効率が十分に改善しなかったこと等から広告宣伝費を中心とした販売費が計画を下回ったこと」などとしています。同期の連結売上高は20,359百万円から16,160百万円ですが、減収の理由として同社が挙げているのはデュオのリニューアルにともなう返品の影響などで、広告費の削減とは別の説明です。
減り方の速さは、今回読んだ媒体各社のヘルプとBinet & Field「Media in Focus」全43ページの範囲では見当たりませんでした。指名検索は、媒体のヘルプの外の言葉です。
関係を示す記述は、同報告書(英国のIPA Databankの分析。PDF p.41)の「テレビ広告はGoogleの検索クエリを生む」です。下げる前に水準を記録しておく、というのが私たちのやり方です。
広告費の削減が売上に与える影響は、施策ごとに違う遅れをともなって出ます。費用と当月の利益はその月に動き、売上は出そろいません。動くのは配信の学習、母集団、ブランド側の3つです。
時間差は、媒体各社が単位つきで公開しています。Google 広告はコンバージョン イベント50回程度またはコンバージョン サイクル3回程度、Meta広告は1週間以内に約50件の結果。母集団は有効期間(既定30日間・最長540日間)ぶん遅れます。ブランド側は日数ではなく評価の窓の話です(Binet & Field、英国のIPA Databankの分析。PDF p.6)。
下げ方は、段階で下げる・低単価帯から順に付け替える・戻す条件を先に書く・評価の窓を成果の速さに合わせる、の4つです。次に見るのは、残した広告費が新規と既存のどちらに効いているか。その分解はデータ基盤・MAのサービスで扱っています。
出典
・Google 広告 ヘルプ「キャンペーンの学習期間の長さと、それに影響を与える要因」ページを見る ── 「学習中」になる理由を「次の 3 つ」としたうえで4項目を列挙(新しい戦略/設定の変更/構成要素の変更/広告グループの目標値の変更=ショッピング キャンペーンのステータスが「学習中」になることがある)、学習期間の長さに影響する3要素、コンバージョン イベント50回程度・コンバージョン サイクル3回程度。2026年9月24日に取得[原文]Binet & Field「Media in Focus: Marketing Effectiveness in the Digital Era」IPA, June 2017(英国のIPA Databankの分析)
[1]PDF p.6:「Long-term cases are those that were evaluated over periods of longer than six months. This is not an arbitrary period: analysis reported in The Long and the Short of It demonstrated how long-term advertising effects on sales uplifts only start to dominate short-term effects after six months. That is to say brand building takes over as the primary driver of growth from sales activation after six months.」(訳:長期の事例とは、6か月より長い期間で評価されたものです。これは恣意的に決めた期間ではありません。『The Long and the Short of It』で報告した分析が、売上の押し上げに対する広告の長期の効果が短期の効果を上回りはじめるのは6か月後であることを示しました。すなわち、成長の主たる牽引役は、6か月を過ぎるとセールス・アクティベーションからブランド構築へと移ります。)この6か月は、事例を評価した期間の長さを指しています。
[2]PDF p.8:「Activation effects are relatively easy to measure, because they tend to be big, immediate and direct. In the short term (six months or less) they tend to produce the biggest sales responses. However, these tend to decay away quickly, and don’t tend to build much over time. Rather, activation tends to produce a series of sales spikes. Brand effects are harder to measure, because they are smaller in the short term, and there is usually no direct link to sales. But brand effects decay away more slowly, and so repeated exposures can cause the base level of sales to rise. In the long run, brand effects are the main driver of growth.」(訳:アクティベーションの効果は比較的測りやすいものです。大きく、即座に、直接的に出る傾向があるからです。短期(6か月以内)では、最も大きな売上の反応を生む傾向があります。ただし、これらは速く減衰していく傾向があり、時間をかけて積み上がることはあまりありません。むしろアクティベーションは、売上の山を連続して生む傾向があります。ブランドの効果は測りにくいものです。短期では小さく、売上との直接のつながりが通常は無いからです。しかしブランドの効果は減衰がよりゆるやかで、繰り返し接触することで売上の土台の水準が上がることがあります。長期で見れば、ブランドの効果が成長の主たる牽引役です。)
[3]PDF p.41:「Offline advertising makes online activation work harder – TV ads drive Google search queries, for instance.」/「Short-term effects cannot reliably be projected forward to long-term ones.」(訳:オフラインの広告は、オンラインのアクティベーションをより効かせます。たとえばテレビ広告はGoogleの検索クエリを生みます。/短期の効果を、そのまま長期の効果へと確かなかたちで引き延ばすことはできません。)2つの文は同じページの別の段落にあります。
執筆者
永野 陽平
お問い合わせ
7つの質問で、御社の顧客がいま資産に変わっているかが分かります。
3分・登録不要。結果を見てからご相談いただけます。