広告費を削減すると売上はどうなる? 時間差が出る3つの仕組みと、下げ方の4つの順番
広告費を削減すると、費用と利益はその月に動き、売上は遅れて動きます。「何%減らすと何%落ちる」を結ぶ数字は、今回読んだ資料にはありませんでした。時間差を作る3つの仕組みを単位つきで整理し、下げ方の4つの順番までまとめました。
読む広告依存率とは、ある期間に獲得した新規顧客のうち、有償の広告を経由した人が占める割合です。株式会社SaaTsuが自社の指標として置いた定義で、会計基準にも業界の共通定義にもありません。決算書に載る広告宣伝費率は「いくら使ったか」の比率で、広告を止めたら新規が何割消えるかは表しません。上場企業の一次資料157本を調べても、新規獲得に占める経路の比率を数値で出していたのは1社だけでした(2026年9月24日時点)。
広告で新規が伸びているなら、それは効いている投資です。この記事は広告を止める話ではなく、止めずに比率を動かす順番の話です。
新規獲得の何割を広告に頼っているかが社内で答えられないときは、顧客資産化診断で獲得と継続の分解から現在地を確かめられます(7問・約3分)。
広告依存率とは、ある期間に獲得した新規顧客のうち、有償の広告を経由した人が占める割合です。株式会社SaaTsuが自社の指標として置いた定義で、会計基準にも業界の共通定義にもありません。式は「広告経由の新規獲得数 ÷ 新規獲得数の全体」です。広告依存度と呼ぶこともあります。
ある月の新規申込が1,000件で、うち広告経由が600件なら、広告依存率は60%です(600÷1,000)。1,000件と600件は計算のための例で、実在の数字ではありません。
要点は分母です。広告宣伝費率の分母は売上高(金額)、広告依存率の分母は新規獲得の全体(件数・人数)です。金額の比率をどれだけ精密に出しても、「広告を止めたら新規が何割止まるか」は出てきません。
広告が効いているのは良いことです。ここで見るのは広告の是非ではなく、広告以外の入口がどれだけあるかです。
私たちが顧客側の上場32社の有価証券報告書・決算短信・決算説明資料等を読んだ範囲では、「広告宣伝費」の科目で金額を確認できた23社の比率は、ステップの0.6%からKIYOラーニングの43.5%まで開いていました(各社の資料から私たちが計算。2026年9月18日取得)。集計は広告宣伝費率の記事にまとめています。
広告宣伝費率と広告依存率の2つは、逆の向きに動くことがあります。広告の単価が下がれば、同じ割合で広告から人を連れてきていても、費用の比率だけは下がります。費用が減ったことと、広告に頼らなくなったことは、別の出来事です。
広告費が減っていても、広告を切ったとは限りません。カーブスホールディングスは2025年8月期の広告宣伝費が減った理由に、フランチャイズ加盟店からの広告分担金の増加と、マーケティングの効率改善を挙げています(同社「有価証券報告書-第17期」p.22。2026年9月18日取得)。この2つの比率の関係は私たちの読み方で、各社の資料に書かれているものではありません。
レイクルーは2026年4月9日に「企業の顧客獲得チャネルに関する実態調査」を配信しました。顧客獲得でデジタル広告に依存していると答えた企業経営者のうち、60.5%が依存度に危機感を持つと回答しました(「やや危機感がある」46.5%と「非常に危機感がある」14.0%の合計)。調査PR代行会社の自主調査で、調査期間2026年3月17日〜18日、インターネット調査、企業経営者312名です(2026年9月24日取得)。同じ調査で依存を認めたのは全体の27.6%、CPAが直近3年間で高騰したと答えたのは24.1%でした。
中立の統計ではなく、依存度も危機感も4段階の自己申告で、獲得の実数ではありません。危機感の設問は「依存している」と答えた層だけが対象です。
同じ調査で今後の方針を聞いた設問では、1位が「デジタル広告の予算を維持し、運用を改善する」43.3%、2位が「デジタル広告以外のチャネルへの投資を強化する」26.6%でした(レイクルーの自主調査。企業経営者312名)。危機感を持つ層と、配分を変える層は一致していません。意志ではなく順番の問題だと私たちは見ています。手元に「広告経由が何割か」の数字がなければ、減らす計画は立ちません。
依存そのものをリスクとして開示している会社もあります。ポートは2026年3月期の有価証券報告書の事業等のリスクで、主力事業の集客が検索エンジンと運用型広告に依存しているとし、対応策をこう記しています。
このような事業プラットフォーム依存リスクに対しては、特定の集客チャネルへの過度な依存を脱却すべく、SNSや大学等との連携を通じたリアルチャネルをはじめとする多様な集客経路の開拓や自社メディアのブランド力強化を進め、マルチチャネルマーケティングを推進することで安定的なユーザー流入基盤の確立を図っております。
── ポート「有価証券報告書」2026年3月期 p.31(2026年9月18日取得)
広告宣伝費率との違いを、分子と分母で並べます(図1)。
運用型広告とSNS広告は分子に入ります。迷うのは、掲載料を払っている比較サイト、アフィリエイト、スカウト媒体、指名検索に出す広告です。どれも費用を払って接点を買っているので分子に入れます。狭く取るほど比率は低く出ます。
分母は新規獲得の件数か人数です。売上高を使うと単価の高い顧客が偏って効きます。定期購入や会員制なら、初回の申込件数か新規会員数です。
北の達人コーポレーションは、四半期ごとの自社サイト等の新規顧客獲得人数(ECモールを除く)を「自社広告による獲得」と「その他」に分けて開示しています(同社「2027年2月期第1四半期決算補足説明資料」p.19。2026年9月18日取得)。分子と分母を分けて数える運用は、実際に行われています。
最後に触れた広告に成果を全部つけると(ラストクリック)比率は高く出て、最初に知ったきっかけで数えると低く出ます。どちらで数えたかを記録します。期の途中で変えると、比率の動きが施策の成果なのか集計の変更なのか分かりません。
私たちは、保管している上場企業の一次資料158本(有価証券報告書・決算短信・決算説明資料等。2026年9月18日取得)のうちテキスト化できた157本を、「獲得チャネル」「流入経路」「登録経路」「集客チャネル」の4語で2026年9月24日に全文検索しました。この範囲で、新規獲得に占める経路の比率を数値で示していたのは1社です。MS-Japanが、求職者の登録経路を有料チャネル46%・オーガニック54%としています(図2)。
なお北の達人コーポレーションの「自社広告による獲得/その他」の内訳は、値がグラフのため実数を取り出せず、比率として数えていません。
注意点が2つあります。1つは、比率が推計値であることです。作り方は注記にこう書かれています。
…登録者の主な獲得チャネルを、「有料チャネル(スカウト媒体・検索広告・SNS広告 等)」および「オーガニックチャネル(SEO・社名検索・再登録 等)」に分類し、…内部データと業界動向をもとに推計したものです。
── MS-Japan「2026年3月期 決算説明資料」p.18(省略した2か所は、いずれも同社を指す自称の語です。2026年9月18日取得)
もう1つは、「有料チャネル」が広告より広いことです。スカウト媒体への支払いが入っているので、46%をそのまま広告依存率としては読めません。MS-Japanはこの比率を載せたページに「広告に依存しない“構造的に強い”収益基盤」という見出しを置いています(同社「2026年3月期 決算説明資料」p.18)。同社の区切りは有料/オーガニックで、広告/非広告ではありません。目的が違えば区切りも違うというだけで、どちらかが誤りということではありません(私たちの読み方です)。
いきなり出せない会社は珍しくありません。次の4つで当たりをつけます(私たちのやり方です)。
| 代わりに見るもの | 取り方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| ① 指名検索の比率 | 社名・商品名を含む検索と、それ以外を分ける | 指名検索に広告を出していると、広告と自然流入が混ざる |
| ② 申込時の「どこで知ったか」 | 申込フォームに1問だけ置く | 自己申告なので、選択肢の並びと回答率で歪む |
| ③ 紹介コードの利用件数 | 紹介の経路だけは、コードで実数が取れる | コードを使わない紹介は入らないので、少なく出る |
| ④ 広告を止めた期間の新規獲得数 | 止められる媒体を絞り、同じ期間で前後を比べる | 季節性や他施策と混ざる。影響が遅れて出る媒体がある |
4つとも、広告依存率そのものではなく代わりに置く目安です。まず①か②を毎月同じ形で取り、揃ってから比率に直します。
| ① 広告宣伝費率 | 広告宣伝費を売上高で割った比率です。金額が有価証券報告書の販売費及び一般管理費の注記に書かれていれば、決算資料から計算できます。業種別の水準と、自社の比率の出し方は広告宣伝費率の記事にまとめています。 |
| ② CPA・CPO | 獲得1件あたりにかかった広告費です。北の達人コーポレーションは、自社広告の広告宣伝費を自社広告の新規顧客獲得人数で割った値をCPOと呼んでいます(同社「2027年2月期第1四半期決算補足説明資料」p.19の注記、2026年9月18日取得)。 |
| ③ オーガニック | 費用を直接かけずに来た経路の総称です。MS-Japanは、SEO・社名検索・再登録・口コミによる紹介をここに入れています(同社「2026年3月期 決算説明資料」p.18、2026年9月18日取得)。 |
| ④ 紹介・リファラル | 既存顧客や取引先からの紹介で来る経路です。レイクルーの調査では、現在の主要な顧客獲得チャネルの1位でした(45.5%。調査PR代行会社の自主調査、企業経営者312名。2026年4月9日配信、2026年9月24日取得)。 |
| ⑤ ラストクリック | 直前に触れた接点に成果を全部つける集計の仕方です。広告は購入の直前に触れやすいので、この取り方では比率が高めに出ます。 |
広告依存率は分数なので、下げ方は2通りです。分子(広告経由の新規獲得)を減らすか、分母(新規獲得の全体)を広告以外で増やすかです。分子を減らすと分母も同時に減り、比率は思ったほど下がらずに新規獲得の総数だけが落ちます。先に手を付けるのは分母です(図3)。
紹介・口コミは、分母を増やす経路のうち、いちばん既存顧客に近いところです。レイクルーの自主調査(調査PR代行会社による、企業経営者312名)では、現在の主要な顧客獲得チャネルの1位が紹介・リファラルで45.5%でした。今後、デジタル広告以外でどのチャネルに注力するかを聞いた設問では、最多は「特にない」の26.9%、チャネルの1位は紹介・リファラルの24.7%でした。
カーブスホールディングスは2025年8月期に、会員数が81.7万名から4.6万名増えて86.3万名になったと書いています。挙げている施策は、新規入会募集キャンペーン、メディアミックスマーケティング、口コミ紹介マーケティング、地域密着プロモーションの4つで、同じページに月次退会率が過去最低水準になったことも書かれています(同社「有価証券報告書-第17期」p.21)。紹介を増やす施策の前に、続けてもらう施策があります。この順番は顧客資産化の順番の記事、測り方はリテンション率とリピート率の記事で扱っています。
社名や商品名で検索して来る人、以前に登録して戻ってくる人は、その月の広告費とは関係なく入ってきます。MS-Japanはこの層をオーガニック54%(同社の推計値。「2026年3月期 決算説明資料」p.18)と置いています。ウォンテッドリーも2025年8月期の有価証券報告書で、新規ユーザ獲得の起点をこう書いています。
企業ユーザ、個人ユーザともに、新規ユーザの獲得には、各種マーケティング活動やPR活動による流入に加えて、既存ユーザによるサービス利用や口コミが起点となっております。
── ウォンテッドリー「有価証券報告書」2025年8月期 p.5(2026年9月18日取得)
スプリックスも「口コミ・友人紹介等の外部コストの掛からない販売促進・広告宣伝の施策」を顧客の獲得に役立ててきたとしています(同社「有価証券報告書」2025年9月期 p.11。2026年9月18日取得)。どちらも経路があることの記述で、比率は今回見た2本の資料には記載がありません。
3つ目は分子の側です。広告を止めず、広告で連れてきた人が2回目につながるようにします。初回で終わる人が多ければ、翌月も同じ額の広告が要ります。
要るのは、広告で来た人がその後どう動いたかのデータです。管理画面には初回の獲得までしか残らず、購入と会員の履歴をつないで初めて2回目が見えます。つなぎ方はデータ基盤・MAのサービス、新規と既存に分ける考え方はLTVの計算式の記事にまとめています。
広告依存率とは、ある期間に獲得した新規顧客のうち、有償の広告を経由した人が占める割合です。式は「広告経由の新規獲得数 ÷ 新規獲得数の全体」です。株式会社SaaTsuが自社の指標として置いた定義で、会計基準にも業界の共通定義にもありません。
分母が違います。広告宣伝費率は広告宣伝費を売上高で割った比率で、有価証券報告書や決算短信から計算できます。広告依存率は広告経由の新規獲得を新規獲得の全体で割った比率で、社内のデータからしか出せません。
ステップの2025年9月期は広告宣伝費率が0.6%、営業利益率が23.9%ですが(同社「2025年9月期決算短信」p.10から私たちが計算。2026年9月18日取得)、新規生徒の何割が広告経由かは読み取れません。
私たちが保管している上場企業の一次資料158本のうち、テキスト化できた157本を全文検索した範囲では、新規獲得に占める経路の比率を数値で示していたのは1社でした(資料は2026年9月18日取得、検索は2026年9月24日)。MS-Japanが求職者の登録経路を有料チャネル46%・オーガニック54%としています(同社「2026年3月期 決算説明資料」p.18)。
ただしこの値はMS-Japanの内部データと業界動向にもとづく推計で、実測値ではありません。有料チャネルにスカウト媒体が含まれるため、広告だけの比率でもありません。
比べる相手は、他社の水準より自社の前期です。目安になる数字を、私たちは持っていません。業種横断の統計がなく、開示から作ることもできないためです。
先に手を付けるのは分母です。広告を減らすと分子と分母が同時に減り、比率はあまり動かずに新規獲得の総数が落ちます。予算を維持したまま、紹介と指名の経路を増やして分母を厚くするほうが、獲得を落とさずに比率を動かせます。
この順番は私たちの進め方で、出典のある手順ではありません。
立ち上げ期や、新しいカテゴリに参入した直後は、比率が高く出るのが自然です。知っている人が少ない段階では、広告が最初の接点を作ります。
私たちが見ているのは水準ではなく、値を持たないまま広告の増減を決めている状態です。毎月同じ形で出せていれば、比率が高くても判断の材料になります。
広告依存率は、ある期間に獲得した新規顧客のうち、有償の広告を経由した人が占める割合です。式は「広告経由の新規獲得数 ÷ 新規獲得数の全体」で、株式会社SaaTsuが自社の指標として置いた定義です。会計基準にも業界の共通定義にもありません。
決算書から出せるのは、費用の比率までです。保管している上場企業の一次資料158本のうちテキスト化できた157本を全文検索した範囲では、新規獲得に占める経路の比率を数値で出していたのは1社でした(資料は2026年9月18日取得、検索は2026年9月24日)。
出すときは、分子・分母・帰属の3つを先に決めます。すぐに出せないときは、指名検索の比率か、申込時の「どこで知ったか」から始めます。
広告依存から脱却する順番は、分母が先です。既存顧客を次の入口にする、指名で見つけてもらう、広告で来た人を2回目につなげる。分母を増やす2本と、分子の中身を変える1本を、この順番で進めます。
出典
・レイクルー「企業の顧客獲得チャネルに関する実態調査」PR TIMES、2026年4月9日15時00分配信(リリースの見出しは「顧客獲得をデジタル広告に依存している企業の約6割が、デジタル広告への依存度に危機感を抱いている」)ページを見る ── 調査期間2026年3月17日〜18日、インターネット調査、企業経営者(20代〜60代の男女)312名、モニター提供元RCリサーチデータ。2026年9月24日にcurlで取得し、原文HTMLを社内の保管庫に保存書けなかったこと
・広告依存率の業種別の水準は出せていません。新規獲得の経路を比率で開示している会社が見つからないため、集計する材料がありません。この記事に目安となる基準値は書いていません。[原文]引用した資料の記載
[1]ポート「有価証券報告書」2026年3月期 p.31:「<リスクへの対応策> このような事業プラットフォーム依存リスクに対しては、特定の集客チャネルへの過度な依存を脱却すべく、SNSや大学等との連携を通じたリアルチャネルをはじめとする多様な集客経路の開拓や自社メディアのブランド力強化を進め、マルチチャネルマーケティングを推進することで安定的なユーザー流入基盤の確立を図っております。」
[2]MS-Japan「2026年3月期 決算説明資料」p.18 注記:「本構成比は、…および類似他社における登録者の主な獲得チャネルを、『有料チャネル(スカウト媒体・検索広告・SNS広告 等)』および『オーガニックチャネル(SEO・社名検索・再登録 等)』に分類し、…内部データと業界動向をもとに推計したものです。」(省略した2か所は、いずれも同社を指す自称の語です)
[3]ウォンテッドリー「有価証券報告書」2025年8月期 p.5:「『Wantedly』の国内向けサービスの個人ユーザは432万人、企業ユーザは4.3万社となっております。企業ユーザ、個人ユーザともに、新規ユーザの獲得には、各種マーケティング活動やPR活動による流入に加えて、既存ユーザによるサービス利用や口コミが起点となっております。」
執筆者
永野 陽平
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