カテゴリーエントリーポイントとは、買い手が購買に向かい始めるときに抱く考えのことです。英語では Category Entry Points、略してCEPと書きます。商品の特徴でも、ターゲット属性でもありません。場面です。結びつく場面が増えるほど、思い出される入口が増えます。(この整理は私たちのもので、公式の説明ではありません)
出典:Ehrenberg-Bass Institute for Marketing Science ほか。公開情報で確認できなかった部分は、その旨を明記しています。
「誰に売るか」を決めても、思い出してもらえるとは限りません。人が思い出すのは、属性ではなく状況だからです。CEPは、そこに焦点を合わせる考え方です。
なぜ場面が要るのか。Ehrenberg-Bass研究所のJohn Dawes教授は、「up to 95% of business clients are not in the market for many goods and services at any one time(任意の時点では、法人顧客の最大95%が多くの商品・サービスの市場にいない)」と書いています。ただし同じページで「95%という数字は正確なルールのつもりではなく、考え方を伝えるための経験則だ」とも断っています。いま探していない相手に届く経路は、思い出される場面を持っているかどうかで決まります。(出典:Professor John Dawes, Ehrenberg-Bass Institute「Advertising effectiveness and the 95-5 rule」2021年5月/2026年8月17日閲覧)
CEPは、メンタルアベイラビリティの部品
提唱しているEhrenberg-Bass研究所は、こう定義しています。
Category Entry Points (CEPs) are the building blocks of Mental Availability — they capture the thoughts that category buyers have as they transition into making a category purchase.
── Ehrenberg-Bass Institute「Identifying and Prioritising Category Entry Points」(2026年8月17日閲覧)
訳すと「CEPはメンタルアベイラビリティの構成部品であり、カテゴリの買い手が購買へ移行していくときに抱く考えを捉えたものだ」となります。「building blocks(構成部品)」という言い方が要点です。メンタルアベイラビリティという抽象的なものを、扱える単位に割ったのがCEPです。
同じページは、その必要性をこう書いています。
Strong Mental Availability (being easily thought of in buying situations) is essential for building a successful brand. Without it, the brand can’t get bought.
── 同ページ
「それが無ければ、そのブランドは買われようがない」。強い言い方ですが、順番としてはそのとおりです。候補に挙がらないものは、比較されることもありません。
右側に並んでいるのが、CEPにあたるものです。いずれも「どんな会社か」ではなく「どんなときか」で書かれています。この図の場面は、私たちが自社向けに書き出した例です。公式の分類や推奨リストではありません。
属性で書くと、思い出されない
CEPのつもりで属性を書いた状態は、実務でよく起きます。属性は「誰か」で、CEPは「どんなときか」です。
| 属性になっている書き方 | 場面になっている書き方 | |
|---|---|---|
| 形 | 〜な会社 | 〜と気づいたとき |
| 例1 | EC事業を持つ企業 | リピート率が落ちていると分かったとき |
| 例2 | 年商50億円以上の企業 | 新規の獲得単価が上限に当たったとき |
| 例3 | マーケ部門が10名以上 | 担当が代わって設計が引き継げないとき |
| 使い道 | 誰に配信するかを決める | 何を書けば思い出されるかを決める |
属性が要らないという話ではありません。配信先を絞るには属性が要ります。ただ、思い出してもらう設計には、属性は効きにくくなります。人は「自分は年商50億の会社だ」と思って検索しません。「リピートが落ちている」と思って検索します。
どうやって書き出すか
ここで正直に書きます。公開されている情報だけでは、書き出しの手順まではたどれませんでした。
LinkedIn B2B Instituteのページには「Use The W’s To Identify Buying Situations(W群を使って購買場面を特定する)」という見出しがあります。ただしその中身にあたる項目の列挙は、公開ページには載っていません。Ehrenberg-Bass側のページにも、書き出しの具体的な手順や、いくつ持つべきかの記述はありませんでした。
ここから先は、私たちのやり方です。公式の手順ではありません。
私たちは、商談の議事録と問い合わせフォームの自由記述から、「相談しようと思った理由」の文だけを抜き出して並べます。私たちが見てきた範囲では、そこに書かれているのは属性ではなく場面です。
並べたあと、同じことを言っている文をまとめて、10〜15の場面に整理します。この数字も私たちの運用上の目安で、根拠のある推奨値ではありません。
この方法の良いところは、想像で書かないで済むことです。顧客が実際に書いた文が元になります。まだ顧客が少ない段階では使えないので、その場合は失注理由から拾います。
では、何から手をつけるか
3つです。
- 「〜な会社」で書いた文を、「〜のとき」に置き換えてみる。既存の資料にあるターゲット定義から始めれば十分です。書き換えられない項目は、そもそも場面になっていません
- 実際の言葉から拾う。商談の議事録、問い合わせの自由記述、失注理由。想像で書いた場面は、検索されている言葉と一致しません
- 1場面につき1本、コンテンツを当てる。場面の数だけ入口ができます。ただし全部を一度に埋める必要はありません。相談の多い順に3つからで十分です
ここで多くの場合ぶつかるのが、「場面を書き出したが、社内で優先順位が決められない」という壁です。Ehrenberg-Bass側も「Determine which CEPs are particularly useful for your brand to be mentally competitive(自社が想起で競争できるよう、どのCEPが特に有用かを見極める)」と書いていますが、その決め方の記述はありません。何で測るかという話と合わせて考える必要があります。
場面が書き出せたら、次はどの接点でその場面に当てるかです。同じ場面でも、リスト獲得で当てるのかPushで当てるのかで打ち手が変わります。CRM戦略設計のページに、目的と接点を掛け合わせた6つのマスで整理しています。
よくある質問
カテゴリーエントリーポイントとは、簡単に言うと何ですか?
買い手が購買に向かい始めるときに抱く考えのことです。Ehrenberg-Bass研究所は「Category Entry Points (CEPs) are the building blocks of Mental Availability — they capture the thoughts that category buyers have as they transition into making a category purchase」と定義しています。「メンタルアベイラビリティの構成部品」という位置づけです。(出典:Ehrenberg-Bass Institute「Identifying and Prioritising Category Entry Points」2026年8月17日閲覧)
ターゲット設定とは違うのですか?
違います。ターゲットは「誰か」を決めるもので、CEPは「どんなときか」を決めるものです。配信先を絞るには属性が要りますが、思い出してもらう設計では属性は効きにくくなります。人は「自分は年商50億の会社だ」と思って検索するのではなく、「リピートが落ちている」と思って検索するためです。
CEPは、いくつ持つべきですか?
公開情報では確認できませんでした。Ehrenberg-Bass側にもLinkedIn B2B Institute側にも、適正な数を示した記述は見つかっていません。優先順位の付け方についても「Determine which CEPs are particularly useful for your brand」とあるだけで、決め方の説明はありません。私たちは運用上の目安として10〜15に整理していますが、これは根拠のある推奨値ではなく、私たちのやり方です。
どうやって洗い出せばいいですか?
公式の手順は、公開ページからは確認できませんでした。LinkedIn B2B Instituteに「Use The W’s To Identify Buying Situations」という見出しはありますが、W群の中身の列挙はページに載っていません。私たちは、商談の議事録と問い合わせの自由記述から「相談しようと思った理由」の文だけを抜き出して並べ、同じことを言っている文をまとめる方法を使っています。これは私たちのやり方で、公式の推奨ではありません。想像で書かずに済むことが利点です。
・LinkedIn B2B Institute(B2BにおけるCEPの解説ページ)ページを見る(2026年8月17日閲覧)── B2BにおけるCEPの位置づけ
・Professor John Dawes(Ehrenberg-Bass Institute)「Advertising effectiveness and the 95-5 rule」2021年5月ページを見る(2026年8月17日閲覧)── 95%が市場の外にいること、およびそれが経験則である旨
※ 「W群」の具体的な項目、CEPの適正な数、優先順位の決め方は、いずれも上記の公開ページには記載がありませんでした。本記事でそれらに触れている部分は私たちのやり方であり、公式の推奨ではありません。
※ Binet & Field「THE 5 PRINCIPLES Of Growth In B2B Marketing」にCEPの記述はありません(全38ページで該当なし)。CEPはEhrenberg-Bass系の概念です。