メッシーミドルとは──比較検討が一直線に進まない理由
メッシーミドルとは、きっかけと購入のあいだにある、探索と評価をくり返す空間のことです。Googleが行動科学の専門機関 The Behavioural Architects の協力を得て行った調査で提示された概念で、報告 […]
読むカスタマージャーニーとメッシーミドルの違いは、「探索」と「評価」を分けるかどうかです。マッキンゼーの「コンシューマー・ディシジョン・ジャーニー」(2009年)は、この2つを1つの「積極的評価」という段階にまとめています。Googleは2020年に、この2つは認知的に別物なので、必要な戦術も違うと書きました。
出典:Google / The Behavioural Architects「Decoding Decisions ─ Making sense of the messy middle」(2020)p.14・p.17。マッキンゼーの元記事は当方の環境から接続できず未確認のため、説明は報告書の記述に基づきます。
「カスタマージャーニーを描き直したい」という相談を受けることがあります。そのとき最初に確認するのは、いま使っているモデルが探索と評価を分けているかどうかです。分けていないモデルで描き直すと、施策の並べ方が変わりません。
カスタマージャーニーとは、ブランドや製品が注意を引いた瞬間から、行動・購入に至るまでの道筋を段階に分けて描いたものです。報告書は、8つのモデルの1番目(1898年のAIDA)をこう説明しています。
Elmo Lewis’ theoretical customer journey from the moment a brand or product attracts consumer attention to the point of action or purchase.
── 同報告書 p.14(8つのモデルの1番目・AIDAの説明)
つまり「カスタマージャーニー」は特定の1モデルの名前ではなく、100年以上のあいだ何度も描き直されてきた枠組みの総称です。だから「カスタマージャーニーとメッシーミドルはどちらが正しいか」という問いは立ちません。問いは、いま使っているモデルが探索と評価を分けているかどうかです。
Googleの報告書は、行動科学のリサーチ会社 The Behavioural Architects と共同で、購買のモデルの変遷を1枚に並べています。
| # | 年 | モデル | 提唱者 | 報告書の説明(要旨) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 1898 | AIDA | Elmo Lewis | ブランドや製品が注意を引いた瞬間から、行動・購入までを描いた理論上のカスタマージャーニー |
| 2 | 1924 | The Funnel | William Townsend | AIDAを応用し、漏斗(ファネル)の概念を持ち込んだ |
| 3 | 1961 | DAGMAR | Russell Colley | 意思決定モデルとして意図されたものではないが、ファネルに認知前の段階を加えた |
| 4 | 1986 | Moment of Truth | Jan Carlzon | 顧客が企業に接触するたびに、印象が形づくられる機会がある |
| 5 | 1997 | ATR-N | Ehrenberg | 購入後の体験と、そこへの働きかけ(ナッジ)の重要性を強調した |
| 6 | 2005 | First & Second Moments of Truth | A.G. Lafley | Carlzonを発展させ、製品を「見る」瞬間と「使う」瞬間を第1・第2に分けた |
| 7 | 2009 | The McKinsey consumer decision journey | McKinsey | 「積極的評価」段階により、一直線ではない能動的な過程として捉え直し、「ロイヤルティ・ループ」を導入した |
| 8 | 2011 | ZMOT | CarlzonとLafleyの「真実の瞬間」に、初めて製品やサービスを知る段階を足した |
出典:同報告書 p.14(2026年8月19日にPDFを取得)。原文は英語で、説明は要旨です。年号・モデル名は報告書の表記のまま。番号と年号の対応は同ページの並び順(古い順)に従い、7番目のマッキンゼー(2009年)は同報告書の脚注5でも確認できます。
報告書は、この並びについて自分で断りを入れています。
The Behavioural Architects eventually proposed the above list as representative of the way thinking in this space has evolved. It isn’t exhaustive – we chose not to include any model that seemed more focused on organisational concerns than consumer perspectives – but what this list does show is a general direction of travel and a tendency towards increasing detail.
── 同報告書 p.14
「網羅的ではない」と書いたうえで、「詳細化に向かう流れ」を示すものだと位置づけています。モデルの優劣を並べた表ではありません。
7番目のマッキンゼー(2009年)について、報告書はこう説明しています。
McKinsey’s “active evaluation” stage updates decision-making to reflect a less linear, active process and introduces the “loyalty loop”.
── 同報告書 p.14
変えた点は2つです。
2番目のThe Funnel(1924年・William Townsend)が漏斗の概念を持ち込み、3番目のDAGMARはその漏斗に事前認知の段階を足しています(p.14)。報告書はこの並びを「詳細化に向かう流れ」と説明しています。マッキンゼーは、そこに循環を入れました。
ここは私たちの見方ですが、この「循環」の発明は、いまも生きています。買ったあとの体験が次の購買に戻る、という構造は、私たちが「顧客資産化」と呼んでいるものとほぼ同じです。顧客資産化のページで扱っているのは、このループの部分です。
並びの最後は、2011年のZMOTです。報告書の説明はこうです。
Google extends Carlzon’s and Lafley’s moments of truth with the “zero moment of truth” – when you start to learn about a product or service for the first time.
── 同報告書 p.14
この並びの最後は、Googleのモデルです。報告書は、CarlzonとLafleyの「真実の瞬間」を引き継いだものとして位置づけています。そして2020年に、メッシーミドルを出しました。
報告書は、マッキンゼーのモデルとの違いをこう書いています。
In McKinsey’s consumer decision-making model (one of our favourite recent models), these modes are combined into a single “active evaluation” phase. However, our research suggests that they are cognitively distinct with different reward systems and, as such, different tactics are required to connect with consumers depending on whether they are exploring or evaluating.
── 同報告書 p.17
マッキンゼーのモデルを否定していません。「最近のモデルのなかで気に入っているもののひとつ」と書いたうえで、そのモデルが探索と評価を1つの段階にまとめている点を挙げています。
| コンシューマー・ディシジョン・ジャーニー(2009) | メッシーミドル(2020) | |
|---|---|---|
| 形 | 循環(ロイヤルティ・ループ) | 循環(探索と評価のループ) |
| 比較検討の扱い | 1つの「積極的評価」段階 | 探索と評価の2つに分ける |
| 報告書の位置づけ | 一直線でない能動的な過程として捉え直し、ロイヤルティ・ループを導入(p.14)。「最近のモデルのなかで気に入っているもののひとつ」(p.17) | 探索と評価は認知的に別物で、報酬系が違う(p.17) |
| 実務への含意 | 循環として設計する | 探索側と評価側で、別の打ち手を当てる |
出典:同報告書 p.14・p.17(2026年8月19日にPDFを取得)。原文は英語。新旧の優劣を示す表ではありません。2020年のモデルは、2009年のループの考え方を引き継いだうえで、その中を2つに割っています。なお「実務への含意」の行は報告書の記述ではなく、私たちの整理です。
ここからは報告書の記述ではなく、私たちのやり方です。3つあります。
3つめが要点です。ジャーニーマップを作る作業そのものは、社内で見ている絵を揃えるうえで効きます。ただ、数字が動くかどうかは別です。作り直したのに動かない、というご相談を、私たちは繰り返し受けています。図の形ではなく、施策の当て先が変わっていないからです。
探索と評価の分け方については、メッシーミドルの記事で6つのバイアスと31カテゴリの検証結果まで扱っています。
以下の回答は、Google / The Behavioural Architects「Decoding Decisions」(2020)に基づきます。ページ番号は各回答内に記載しています。
比較検討の中を1つの段階として扱うか、探索と評価の2つに分けるかです。マッキンゼーの「コンシューマー・ディシジョン・ジャーニー」(2009年)は、これを1つの「積極的評価」段階にまとめています。Googleの報告書は、この2つは認知的に別物で、報酬系も違うとしています。そのため必要な戦術も変わると書いています(p.17)。
報告書は否定していません。「最近のモデルのなかで気に入っているもののひとつ」と書いています(p.17)。報告書はこの点に触れていませんが、循環として捉える考え方は、私たちはそのまま生きていると考えています。違うのは、比較検討の中を1つとして扱うか2つに分けるかです。
8つです。1898年のAIDA(Elmo Lewis)から、2011年のZMOT(Google)まで(p.14)。マッキンゼーは7番目にあたります。報告書自身が「網羅的ではない」と断っており、組織側の関心に寄ったモデルは意図的に外したと書いています。
どちらもGoogleのモデルです。ZMOT(2011年)は、CarlzonとLafleyの「真実の瞬間」に、初めて製品やサービスを知る段階を足したものです(p.14)。メッシーミドル(2020年)は、その並びの続きとして、きっかけと購入のあいだの構造を扱っています。
出典
・Google / The Behavioural Architects「Decoding Decisions ─ Making sense of the messy middle」(2020)PDFを見る ── 8つのモデルの変遷(p.14)、マッキンゼーとの違い(p.17)。全98ページを2026年8月19日に取得執筆者
永野 陽平
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