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データと計測

ROASが悪化したとき、最初に疑うのは広告ではなく計測:悪化の切り分け手順

ROASの悪化とは、広告費に対する成果の比率として管理画面に表示される数値が下がっていく状態です。ただしその分子は、計測できたコンバージョンです。Metaは、iOSの全体的なウェブコンバージョンのおよそ15%が過小報告されているという自社の推定を公表しています(発表は2021年9月。ただし2022年2月にはおよそ8%へ更新)。つまりROASの悪化は、広告の効率だけでなく、計測の網羅度でも起きます。株式会社SaaTsuは、悪化が計測の欠落なのか、効率の低下なのかを切り分ける手順を整理しました。広告を削るか続けるかを決める前に、数字がどこまで事実かを確かめる。それがこの記事の目的です。

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ROASの悪化とは

ROASの悪化とは、広告費に対する成果の比率として管理画面に表示される数値(ROAS・広告費用対効果)が、下がっていく状態です。ROASはReturn On Advertising Spendの略で、コンバージョンの価値を広告費で割った比率です。

この比率の分子に入るのは、実際に起きたコンバージョンの全部ではなく、計測できたコンバージョンです。分母の広告費は請求額なので欠けません。したがってROASの数値は、広告の効率と、計測の網羅度の2つで動きます。

なぜROASの悪化が、広告の悪化とは限らないのか

1 プラットフォーム自身が、実際より少ないと公表した

Meta for Businessニュースの2021年9月22日の発表(プロダクトマーケティング担当バイスプレジデント Graham Mudd名義)は、「当社の推定では、iOSの全体的なウェブコンバージョンのおよそ15%が過小報告されていますが、広告主によってかなりの幅があるようです。」と書いています(2026年10月16日取得。原文[1]。鉤括弧はMeta自身が公開している日本語版の文言です)。同じ発表には「売上やアプリインストールなど実際のコンバージョンは、多くの広告主で報告されている測定値よりも高いと思われます。」ともあります(同発表)。

向きを確かめます。過小報告とは、実際に起きたコンバージョンの一部が管理画面に載らないことです。つまりこの推定が当てはまる範囲では、広告の実際の成果は、画面の数字より多い側にあります。管理画面のROASの低下には、効率の低下のほかに、この欠けの分が混ざり得ます。

2 欠けの幅は、固定ではない

2022年2月14日の発表は「この度、iOSの全体的なウェブコンバージョン数が、現在は実際よりもおよそ8%少なく報告されていると見られることをお知らせいたします。この値は、9月の時点では15%でした。」と推定を更新しています(Meta for Businessニュース、2026年10月16日取得。原文[2])。同じ発表は、改善の取り組みを続けるとしたうえで、「Metaのベースラインの一部として、今後も一定レベルの過少報告が発生することが見込まれます。」と書いています(同発表)。

欠けは一枚岩でもありません。2021年9月の発表には、アプリ計測側でSKAdNetworkの変更に伴うバグがおよそ10%の過小報告を発生させていて、修正した、という報告も入っています。また同じ発表には、コンバージョン値の推定レポートの拡張によって「お客様に報告されるコンバージョン値や、広告費用対効果(ROAS)などの関連指標で増加が見られる可能性があります。」という記述もあります(いずれもMeta for Businessニュース 2021年9月22日、2026年10月16日取得。原文[1])。計測側の変更だけで、ROASの数値は上下に動きます。

この2本の発表は2021年9月と2022年2月のもので、この記事の取得日(2026年10月16日)からは約5年前と約4年8か月前にあたります。見た2ページの範囲では、その後に推定値を更新した記述は見ていません。次に、前提の制度が現行かを確かめます。

3 背景にあるのは、OS側の制度の変更

Apple Developerの「User privacy and data use」のページには、iOS 14.5、iPadOS 14.5、tvOS 14.5以降では、他社のアプリやウェブサイトを横断してユーザーを追跡したり、端末の広告識別子にアクセスしたりするには、App Tracking Transparency(ATT)の枠組みを通じてユーザーの許可を受ける必要がある、とあります(2026年10月16日取得。英文は原文[3]にそのまま置いています。訳は私たちのものです)。許可が得られない場合、端末の広告識別子の値はすべてゼロになる、とも書かれています(同ページ)。

同ページのFAQは、ハッシュ化したメールアドレスなど別の識別子での追跡にも、ATTの枠組みを通じた許可が要る、としています。端末の特徴から識別子を導き出す方法(フィンガープリンティング)も、許可の有無にかかわらず認められない、とされています(同ページ、2026年10月16日取得)。

このページは取得日時点の現行の文書で、EU向けにiOS 27.2からATTの確認画面に代替版を導入する予定にも触れています。Metaの発表が4〜5年前でも、前提となる識別子の制度は現行です。設定の不具合ではなく、制度の変更が計測の形を変えた、というのがこの節の整理です。

計測の欠落は、どの向きに起きているか 制度 iOS 14.5以降 ATTの枠組みを通じたユーザーの許可が要る 許可が得られない場合、広告識別子の値はすべてゼロになる Apple Developer「User privacy and data use」2026年10月16日取得。訳は私たちのもの 幅 Metaの推定 iOSの全体的なウェブコンバージョンのおよそ15%が過小報告(2021年9月の発表) 広告主によってかなりの幅。2022年2月の発表でおよそ8%に更新 今後も一定レベルの過少報告が発生することが見込まれる、とされている Meta for Businessニュース 2021年9月22日・2022年2月14日、2026年10月16日取得 向き 欠けの方向 実際のコンバージョンは、報告されている測定値よりも高いと思われる 悪化に見える数字の一部は、計測の欠けであり得る(Meta for Businessニュース 2021年9月22日) 3段の並びは私たちが置いたもの。各資料にこの図はない
制度(ATT)が識別子を絞り、Metaの推定が欠けの幅(iOSの全体的なウェブコンバージョンのおよそ15%→およそ8%。広告主によってかなりの幅)を示す。向きは、実際のコンバージョンは報告されている測定値よりも高いと思われる、という側。3段の並びは私たちが置いたもので、各資料にこの図はない。

悪化は、どう切り分けるのか

1 事業の実数と、管理画面を同じ期間で並べる

この節の手順は、引いた資料にあるものではなく、私たちのやり方です。最初に、受注台帳や売上台帳など事業側の実数と、管理画面のコンバージョン数・ROASを、同じ期間で1枚に並べます。管理画面どうしを見比べる前に、計測を経由しない数字を1本立てます。

並べる期間は、評価の早すぎを避けて区切ります。2021年9月の発表には、データの遅延や推定値のレポートによって差異が生じることを踏まえ、コンバージョンに最適化されたキャンペーンの評価の前に、少なくとも72時間または選択した最適化期間が過ぎるまで待つことを検討するよう書かれています(Meta for Businessニュース、2026年10月16日取得)。

2 悪化の出方を、区画で見る

次に、悪化が均一か、特定の区画に寄っているかを見ます。Metaの推定が対象にしているのは、iOSの全体的なウェブコンバージョンという区画です(同発表、2026年10月16日取得)。計測の欠落が原因の低下は、欠けが起きている区画に寄って出ます。デバイス別・OS別・計測経路別に低下幅を割り、特定の区画に寄っているなら、計測の欠落を先に疑えます。

3 どちらか、ではなく、どれだけずつか

切り分けの出口は2択とは限りません。計測の欠落と効率の低下は、同時に起きることもあります。判定の置き方は、事業の実数が減っていないのに管理画面だけが下がっているなら計測側を先に、実数も減っているなら効率側を含めて見る、という向きです。両方に当てはまるなら、両方の打ち手を並行します。この判定の置き方は私たちの整理で、引いた資料にこの手順があるわけではありません。

ROASが悪化したときの、切り分けの手順と分岐 事業の実数(受注・売上の台帳)と、管理画面のコンバージョン数を 同じ期間で1枚に並べる 実数は減っていない → 計測の欠落を先に疑う 管理画面だけが下がっている状態 実数も減っている → 効率の低下を含めて見る 欠落と低下は、同時に起きることもある 打ち手:計測の精度を上げる コンバージョンAPIの設定/ドメインの認証/ 72時間おいてからの評価 Meta for Businessニュース 2021年9月・2022年2月、2026年10月16日取得 打ち手:増分で測る(動かした分だけを取り出す) 止めて測った公開実験:Google社内の統計チームの検索広告の ポーズ実験400件超。業種を横断した平均で89%が増分(2011年) Google Research Blog 2011年7月21日公開、2026年10月16日取得。訳は私たちのもの 分岐の置き方は私たちの整理で、各資料にこの図はない
切り分けは、事業の実数との突き合わせから。右下の89%は、Google社内の統計チームが検索広告について報告した業種を横断した平均(2011年、ポーズ実験400件超。訳は私たちのもの)で、SNS広告やディスプレイ広告の値ではない。分岐の置き方は私たちの整理。

あわせて押さえる言葉

① ATT(App Tracking Transparency)
Appleの許可の枠組みです。iOS 14.5以降、他社のアプリやウェブサイトを横断する追跡と、端末の広告識別子の取得に、ユーザーの許可を求めます(Apple Developer「User privacy and data use」、2026年10月16日取得。訳は私たちのもの)。

② 広告識別子(IDFA)
端末ごとの広告用の識別子です。許可が得られない場合、値はすべてゼロになる、とされています(Apple Developer「User privacy and data use」、2026年10月16日取得)。

③ コンバージョンAPI
広告主の側からサーバー経由でイベントを送る仕組みです。設定するとカスタマージャーニー全体を通して広告のパフォーマンスとアトリビューションの測定の精度が上がる、とされています(Meta for Businessニュース 2022年2月14日、2026年10月16日取得)。

④ 過小報告
実際に起きたコンバージョンの一部が、管理画面に載らないことです。向きは「実際の成果は報告より多い」側です。幅は広告主によってかなりある、とされています(Meta for Businessニュース 2021年9月22日、2026年10月16日取得)。

⑤ 増分(インクリメンタル)
その広告があったから増えた分のことです。広告がなくても起きた分と区別する考え方で、広告を止めて測った公開実験があります(Google Research Blog、2011年7月21日公開、2026年10月16日取得)。

切り分けたあと、どう動かすか

1 計測の欠落なら、プラットフォームが公開している対策から

2022年2月14日の発表は、ウェブコンバージョンのキャンペーンについて、コンバージョンAPIの設定、すべてのドメインの認証、コンバージョンイベントの優先順位の整列、十分な時間を確保してからの評価という対策を挙げています(Meta for Businessニュース、2026年10月16日取得。原文[2])。管理画面の数字を直すのではなく、計測の網羅度を上げる側の対策です。

計測の設計から立て直す場合の私たちの支援範囲は、データ基盤・MAのページにまとめています。

2 効率の低下なら、増分で測る

効率の低下だった場合、次に確かめるのは、その広告があったから増えた分(増分)がどれだけか、です。止めて測った公開実験があります。Google社内の統計チームは、広告を停止したアカウントを対象に、400件超の実験を行いました(Search Ads Pause Studies)。結果は、検索広告由来のクリックのうち、業種を横断した平均で89%は広告を止めてもオーガニックのクリックでは置き換えられなかった、という報告です(Google Research Blog、2011年7月21日公開、2026年10月16日取得。英文は原文[4]に置いています。訳は私たちのものです)。この報告は2011年のもので、この記事の取得日からは約15年前にあたります。その後にこの数値を更新した記述は、今回見たページには見当たりません。対象はGoogleの検索広告で、SNS広告やディスプレイ広告の値ではありません。また、これは広告を販売する当事者であるGoogle自身による実験です。

全チャネルを止めずに増分を見る方法が、配信対象の一部に意図的に届けない除外グループです。作り方はホールドアウトグループで扱っています。なお、どの語の検索広告が増分を生みやすいかは、実験によって結果が分かれています。ブランド語の増分は本稿の範囲を超えるため、ここでは扱わず、別の記事で整理します。

3 どちらでも、どの数字を正に置くかを決める

切り分けの結果がどちらでも、報告に使う数字の正は1つに決めます。チャネルをまたいだ成果の重なりの外し方と、正の台帳の置き方はチャネルをまたいだ成果の重複で扱っています。管理画面のROASは、その画面が見ている範囲での効率として、正の台帳と並べて読みます。

獲得したあとの数字を、どこから見るか。論点だけ先に揃えます。
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ROASの悪化について、よくある質問

管理画面のROASが下がったとき、最初に何を確認すればよいですか?

受注台帳や売上台帳など事業側の実数と、管理画面のコンバージョン数を、同じ期間で並べることからです(これは資料の手順ではなく、私たちの整理です)。実数が減っていないのに管理画面だけが下がっているなら、計測の欠落を先に疑います。実数も減っているなら、効率の低下を含めて見ます。

広告の管理画面のコンバージョン数が、実際より少ないことはあるのですか?

Metaは2021年9月22日の発表で「当社の推定では、iOSの全体的なウェブコンバージョンのおよそ15%が過小報告されていますが、広告主によってかなりの幅があるようです。」と書いています(Meta for Businessニュース、2026年10月16日取得。鉤括弧はMeta自身が公開している日本語版の文言です)。同じ発表には、売上やアプリインストールなど実際のコンバージョンは、多くの広告主で報告されている測定値よりも高いと思われる、ともあります(同発表、2026年10月16日取得)。

iOSのウェブコンバージョンの過小報告は、いまも続いていますか?

Metaの2022年2月14日の発表は、iOSの全体的なウェブコンバージョン数の過小報告の推定をおよそ8%(2021年9月時点では15%)に更新し、「Metaのベースラインの一部として、今後も一定レベルの過少報告が発生することが見込まれます。」と書いています(Meta for Businessニュース、2026年10月16日取得)。この発表は取得日から約4年8か月前のもので、見た範囲ではその後の更新は見ていません。前提となるATTの要件は、2026年10月16日取得の現行ページに書かれています(Apple Developer「User privacy and data use」)。

ROASの悪化を確かめるために、広告を止めて試してもよいですか?

止めて測る方法は、公開実験として存在します。Google社内の統計チームは、広告を停止したアカウントを対象に行った400件超の実験から、検索広告由来のクリックのうち業種を横断した平均で89%は、止めてもオーガニックのクリックでは置き換えられなかった、と報告しています(Google Research Blog、2011年7月21日公開、2026年10月16日取得。訳は私たちのもの。対象はGoogleの検索広告で、SNS広告やディスプレイ広告の値ではありません)。全面停止は売上側のリスクを伴うため、配信対象の一部だけを除外して測る方法もあります。

ROASという指標は、使い続けてよいですか?

使えます。ただし分子が「計測できたコンバージョン」である点を、レポートに書き添えます。Metaの2021年9月22日の発表には、コンバージョン値の推定レポートの拡張によって、報告されるコンバージョン値や広告費用対効果(ROAS)などの関連指標で増加が見られる可能性がある、という記述があります(Meta for Businessニュース、2026年10月16日取得)。計測側の変更でROASの数値は動くので、数値の変化と、設定や仕様の変更を併記して読みます。

まとめ

ROASの悪化とは、広告費に対する成果の比率として管理画面に表示される数値が下がっていく状態です。分子は計測できたコンバージョンなので、ROASの数値は、広告の効率と計測の網羅度の2つで動きます。

計測の側が動く根拠は、プラットフォーム自身の発表にあります。Metaの推定では、iOSの全体的なウェブコンバージョンのおよそ15%が過小報告されていて、広告主によってかなりの幅があります(2021年9月の発表)。2022年2月の発表でおよそ8%に更新され、今後も一定レベルの過少報告が発生することが見込まれる、とされています。向きは、実際のコンバージョンは報告されている測定値よりも高いと思われる、という側です。

切り分けは3段です。事業の実数と管理画面を同じ期間で並べ、悪化の出方を区画で見て、計測の欠落と効率の低下がどれだけずつかを置きます。実数が減っていないのに管理画面だけが下がっているなら、計測の欠落を先に疑います。

打ち手は切り分けの結果で分かれます。計測の欠落なら、コンバージョンAPIの設定やドメインの認証など、プラットフォームが公開している対策から。効率の低下なら、増分で測ります。止めて測った公開実験として、Google社内の統計チームの検索広告のポーズ実験400件超では、業種を横断した平均で89%が増分と報告されています(2011年)。どちらの場合も、報告に使う数字の正は1つに決めます。

広告で獲得した顧客がその後どれだけ残っているかまで含めて正の数字を立てたい場合は、顧客資産化診断(7問・約3分)から始められます。

出典と、書けなかったこと

出典と注記を開く

出典

・Meta for Businessニュース「変化に対応してパフォーマンスと効果測定を改善する」(2021年9月22日公開)ページを見る ── iOSの全体的なウェブコンバージョンのおよそ15%が過小報告されているというMetaの推定と、広告主によってかなりの幅がある旨、実際のコンバージョンは多くの広告主で報告されている測定値よりも高いと思われる旨、72時間または選択した最適化期間が過ぎるまで待って評価する推奨、SKAdNetworkの変更に伴うバグがおよそ10%の過小報告を発生させていて修正した旨、コンバージョン値の推定レポートの拡張でROASなどの関連指標に増加が見られる可能性がある旨。2026年10月16日に取得
・Meta for Businessニュース「レポートの精度とパフォーマンスを高めるためのベストプラクティス」(2022年2月14日公開)ページを見る ── iOSの全体的なウェブコンバージョン数の過小報告の推定がおよそ8%(2021年9月時点では15%)に更新された旨、今後も一定レベルの過少報告が発生することが見込まれる旨、ウェブコンバージョンキャンペーン向けの対策(コンバージョンAPIの設定・すべてのドメインの認証・コンバージョンイベントの優先順位・十分な時間を確保してからの評価)。2026年10月16日に取得
・Apple Developer「User privacy and data use」ページを見る ── iOS 14.5、iPadOS 14.5、tvOS 14.5以降の追跡と広告識別子の取得にATTの許可が要る旨、許可が得られない場合は広告識別子の値がすべてゼロになる旨、ハッシュ化したメールアドレスなど別の識別子での追跡とフィンガープリンティングが認められない旨、EU向けにiOS 27.2からATTの確認画面に代替版を導入する予定。ページに公開日の表記はなく、2026年10月16日に取得
・Google Research Blog「Studies Show Search Ads Drive 89% Incremental Traffic」(2011年7月21日公開)ページを見るおよび同じ要旨の出版物ページ「Incremental Clicks Impact Of Search Advertising」(Google, Inc. 2011)ページを見る ── 広告を停止した広告を停止したアカウントを対象に行った400件超の実験(Search Ads Pause Studies)と、検索広告由来のクリックのうち業種を横断した平均で89%は広告を止めてもオーガニックのクリックでは置き換えられなかったという報告。2026年10月16日に取得
・取得方法は1通りです。4本ともブラウザでページを開き、本文のテキストを取得して読みました。要約ツールは通していません。Metaの2本は、Meta自身が公開している日本語版のページを参照しました。鉤括弧で引いた日本語は、その日本語版の文言です。AppleとGoogleの2本は英語のページで、逐語引用は「引用した原文」に英文のまま置き、訳は私たちが行いました。

書けなかったこと

・過小報告の推定値(およそ15%・およそ8%)の算出方法は扱っていません。見た2本の発表の本文が示しているのは推定値と向きまでで、算出手順の記載は見ていません。いずれもMeta自身の推定で、第三者が検証した値ではありません。
・過小報告の現在の水準は書いていません。今回見た範囲での最後の更新は2022年2月の発表で、この記事の取得日(2026年10月16日)から約4年8か月前にあたります。その後の更新の有無は、今回見た2ページからは判断できないため、本文では「今後も一定レベル」という発表の文言と、ATTの要件が現行の文書にあることまでを書きました。
・ATTの許可率(ユーザーの何割が追跡を許可しているか)は扱っていません。調査会社の推計はありますが、調査主体・母数・調査方法を無料の公開ページで確認できる一次統計に、今回の調査では到達しなかったためです。
・89%という増分の値は、Googleの検索広告を対象に、Google社内の統計チームが行った実験の業種を横断した平均です。SNS広告・ディスプレイ広告・他社の検索広告に当てはめていません。また、実験を行った主体が広告を販売する当事者である点は、値の帰属として本文に残しています。
・どの語の検索広告が増分を生みやすいかは扱っていません。ブランド語の検索広告について、eBayが自社で行った大規模実験が逆向きの結果を報告していますが、その一次資料の照合は本稿の範囲を超えるため、別の記事で整理します。
・LINEやGoogle広告など、Meta以外のプラットフォームの計測の欠けは扱っていません。本稿で引いた過小報告の推定はMetaのiOSウェブコンバージョンに関するもので、他のプラットフォームに同じ幅を当てはめていません。
・ROASの定義そのものの出典は立てていません。本文の定義文は私たちの整理で、広告費用対効果(ROAS)という表記がMetaの発表に出てくることだけを確かめています。
・「事業の実数と並べる」「区画で見る」「どれだけずつか」という切り分けの3段と、図2の分岐は私たちの整理です。引いた資料にこの手順があるわけではありません。
・図1の3段の並びも私たちが置いたものです。各資料にこの図はありません。箱の幅は模式で、量の大小を表すものではありません。
・Metaの発表の英語原文は参照していません。Metaのニュースページがロケールに応じてMeta自身の日本語版を配信するため、日本語版を正として引きました。英語の字句との対応が必要になった場合は、英語版を取得してから引きます。

引用した原文

原文を開く(4件)

[原文]引用した資料の記載

[1]Meta for Businessニュース「変化に対応してパフォーマンスと効果測定を改善する」(2021年9月22日公開、2026年10月16日取得。Meta自身が公開している日本語版の文言):「当社の推定では、iOSの全体的なウェブコンバージョンのおよそ15%が過小報告されていますが、広告主によってかなりの幅があるようです。」/同じ段落の続き:「売上やアプリインストールなど実際のコンバージョンは、多くの広告主で報告されている測定値よりも高いと思われます。」/同ページ「今すぐ実施できる対策」:「データの遅延や推定値のレポートによって微妙な差異が生じることを踏まえ、コンバージョンに最適化されたキャンペーンのパフォーマンスを評価する前に、少なくとも72時間または選択した最適化期間が過ぎるまで待つことを検討してください。」/同ページ「Facebookが実施している取り組み」:「今月初めには、ウェブサイト購入のコンバージョン値の推定レポートを拡張したため、お客様に報告されるコンバージョン値や、広告費用対効果(ROAS)などの関連指標で増加が見られる可能性があります。」/同節:「Facebookは先日、SKAdNetwork (SKAN)の変更に伴って発生していたバグを修正し、この件について広告主に報告しました。およそ10%の過小報告を発生させていたこの問題は、今回行った変更で修正され、レポートが改善されると私たちは考えています。」(この引用の中の「私たち」はMetaを指します)

[2]Meta for Businessニュース「レポートの精度とパフォーマンスを高めるためのベストプラクティス」(2022年2月14日公開、2026年10月16日取得。Meta自身が公開している日本語版の文言。原文では「この値は、9月の時点では15%でした。」の直後に脚注番号が付く):「この度、iOSの全体的なウェブコンバージョン数が、現在は実際よりもおよそ8%少なく報告されていると見られることをお知らせいたします。この値は、9月の時点では15%でした。」/同じ段落の続き:「実際よりも少ない値が報告される要因は、広告主様やキャンペーンによってさまざまですが、状況が改善された大きな理由の1つは、Metaが推奨したベストプラクティスを多くの広告主様が採用したことです。」/次の段落:「Metaは引き続き、データが減っても多くの成果を上げられる広告ソリューションの開発に取り組んでいますが、Metaのベースラインの一部として、今後も一定レベルの過少報告が発生することが見込まれます。」/同ページ「ウェブコンバージョンキャンペーンのレポートのベストプラクティス」の冒頭:「コンバージョンAPIを設定する: 広告主様がコンバージョンAPIを使用してイベントを送信すると、発見からコンバージョンまで、カスタマージャーニー全体を通して広告のパフォーマンスとアトリビューションの測定の精度が上がります。」

[3]Apple Developer「User privacy and data use」(公開日の表記なし、2026年10月16日取得。英語原文のまま。訳は私たちのもの):“In iOS 14.5, iPadOS 14.5, and tvOS 14.5 or later, you need to receive the user’s permission through the App Tracking Transparency (ATT) framework in order to track them or access their device’s advertising identifier.” / 同ページ Using the App Tracking Transparency framework:“Unless you receive permission from the user to enable tracking, the device’s advertising identifier value will be all zeros and you may not track them as described above.” / 同ページ FAQ(ハッシュ化した識別子):“If I have not received permission from a user via the tracking permission prompt, can I use an identifier other than the IDFA (for example, a hashed email address or hashed phone number) to track that user? — No. You will need to receive the user’s permission through the App Tracking Transparency framework to track that user.” / 同ページ FAQ(フィンガープリンティング):“Can I fingerprint or use signals from the device to try to identify the device or a user? — No. Per the Apple Developer Program License Agreement, you may not derive data from a device for the purpose of uniquely identifying it.”

[4]Google Research Blog「Studies Show Search Ads Drive 89% Incremental Traffic」(2011年7月21日公開、2026年10月16日取得。英語原文のまま。訳は私たちのもの。同じ文面が出版物ページ「Incremental Clicks Impact Of Search Advertising」の要旨にもある):“Google statisticians recently ran over 400 studies on paused accounts to answer this question.” / 同ページ:“The results were surprising. On average, the incremental ad clicks percentage across verticals is 89%. This means that a full 89% of the traffic generated by search ads is not replaced by organic clicks when ads are paused. This number was consistently high across verticals.”

執筆者

永野 陽平

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