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AIエージェントとワークフローは、何が違うのか

AIエージェントとワークフローの違いは、経路を誰が決めるかです。Anthropicは「ワークフローとは、LLMとツールが、あらかじめ定義されたコードの経路を通じて組み立てられているシステム」「エージェントとは、LLMが自らの処理とツールの使い方を動的に決めていくシステム」と書いています。LLMとは大規模言語モデルのことで、文章を扱うAIの土台です。そして同じ記事は、エージェント的なシステムが「より良いタスク性能と引き換えに、レイテンシと費用を差し出すことがよくある」とも書いています。レイテンシとは、指示を出してから返ってくるまでの時間のことです。少なくとも、速くなる・安くなるという向きでは書かれていません。選ぶのは「エージェントにするかどうか」ではなく、どこを固定してどこをLLMに任せるか、という線の引き方です(この言い換えは私たちのものです)。

このリードの出典:Anthropic「Building effective agents」(2026年8月28日取得)。本稿の事実は、このページ1つから取っています。これは業界共通の定義ではなく、Anthropicがこの記事の中で使っている定義です。本稿でもそのように扱います。本稿に金額は出てきません。このページに金額の記載はありません。日本語はすべて私たちの訳です。

「AIエージェントを入れたい」というご相談で、最初に食い違うのが言葉です。どれも「AIが自動で何かをやる」ように見えるため、私たちが入る案件では、チャットボット・ワークフロー・エージェントが同じ言葉で話されていることがよくあります。すでにチャットボットやワークフローが動いている場合、それは動いている実装で、置き換える前提になるものではありません。この記事は、その上に何を足すかを決めるための整理です。

見えているものが同じでも、中の作りは違います。そして作りが違うと、費用のかかり方と、失敗したときの直し方が変わります。

AIエージェントとワークフローは、何が違うのか

ワークフローとは、LLMとツールが、あらかじめ人が決めた順番どおりに動くシステムです。エージェントとは、次に何をするかをLLM自身が決めていくシステムです(出典:Anthropic「Building effective agents」/2026年8月28日取得。「人が決めた順番」という補いは私たちのもので、原文は「predefined code paths(あらかじめ定義されたコードの経路)」です。これは業界共通の定義ではなく、Anthropicがこの記事の中で使っている定義です。この2文は、同ページの2つの定義文を私たちが訳し、平易にしたものです。原文はこの下に引用しました)。

Workflows are systems where LLMs and tools are orchestrated through predefined code paths.

Agents, on the other hand, are systems where LLMs dynamically direct their own processes and tool usage.

── Anthropic「Building effective agents」(2026年8月28日取得。訳:ワークフローとは、LLMとツールが、あらかじめ定義されたコードの経路を通じて組み立てられているシステムです/一方でエージェントとは、LLMが自らの処理とツールの使い方を動的に決めていくシステムです)

「predefined code paths(あらかじめ定義されたコードの経路)」と「dynamically direct(動的に決める)」が、対になっています。分かれ目は賢さではありません。経路を先に決めておくか、その場で決めさせるかです。

分かれ目は賢さではなく、経路を誰が決めるか(2列の整理は私たちのもの) ワークフロー 経路を、人が先に決めておく Anthropic:predefined code paths ・通る順番が毎回同じ ・どこで間違えたかを追いやすい → 決まった手順に向く(私たちの読み) エージェント 経路を、LLMがその場で決める Anthropic:dynamically direct ・想定外の順番にも対応できる ・毎回同じ道を通るとは限らない → 性能と引き換えに費用と時間(よくあるとされる) 「Agentic systems often trade latency and cost for better task performance, and you should consider when this tradeoff makes sense.」 ── Anthropic「Building effective agents」(2026年8月28日取得)
図1 ワークフローは経路を人が先に決め、エージェントはLLMがその場で決めます。Anthropicは「エージェント的なシステムは、より良いタスク性能と引き換えに、レイテンシと費用を差し出すことがよくある」と書いています(出典:Anthropic「Building effective agents」/2026年8月28日取得)。「どこで間違えたかを追いやすい」「想定外の順番に対応できる」という2列の整理は私たちのもので、このページがこの対比をしているわけではありません。

エージェントにすると、速く安くなるのか

速くなるとも安くなるとも書かれていません。むしろ逆の向きで書かれています。

Agentic systems often trade latency and cost for better task performance, and you should consider when this tradeoff makes sense.

── Anthropic「Building effective agents」(2026年8月28日取得。訳:エージェント的なシステムは、より良いタスク性能と引き換えに、レイテンシと費用を差し出すことがよくあります。このトレードオフが理にかなうのはどんなときかを考える必要があります)

「trade(引き換えにする)」と書かれています。LLMが自分で次を決めるということは、決めるために何度も呼ぶということです。呼ぶ回数が増えれば、返るまでの時間も、かかる費用も増えます。(回数と、時間・費用の関係は私たちの説明で、このページに書かれているものではありません)

ここが、「AIで効率化」という言葉に期待されているものと、実際に起きることのずれです。効率化として期待されているのは人の手間の削減で、引き換えに差し出すのは、応答の速さとシステムの費用です。どちらが大きいかは、扱う業務によって変わります。

だからこの記事は、エージェントをやめようという話ではありません。Anthropic自身が、このトレードオフが理にかなう場合を考えるように書いています。「理にかなうかどうか」を、入れる前に一度言葉にしておく、という話です(この読み方は私たちのものです)。

AIエージェントとワークフロー、どちらから始めるのか

順番についても記述があります。

Start with simple prompts, optimize them with comprehensive evaluation, and add multi-step agentic systems only when simpler solutions fall short.

── Anthropic「Building effective agents」(2026年8月28日取得。訳:単純なプロンプトから始め、網羅的な評価でそれを最適化し、より単純な解では足りないときにだけ、複数ステップのエージェント的システムを足してください)

「only when simpler solutions fall short(より単純な解では足りないときにだけ)」という条件つきの書き方です。プロンプトとは、AIへの指示文のことです。まず単純な指示文から始める、という順番が書かれています。足りないと分かるには、単純な側を一度作って測っている必要があります。Anthropicの記事は「The key to success, as with any LLM features, is measuring performance and iterating on implementations.」(成功の鍵は、LLMを使うどの機能でもそうであるように、性能を測り、実装を繰り返し直していくことです)とも書いています(出典:同ページ)。

すでにチャットボットやワークフローが動いているなら、先に動いている側が、足りているかどうかを測る相手になります。単純な側が無いまま最初からエージェントで組むと、足りているかどうかを判断する相手がいない状態になります(これは私たちの読み方です)。

動かし始めたあと、何を決めておくのか

実行中の設計についても書かれています。

During execution, it’s crucial for the agents to gain “ground truth” from the environment at each step (such as tool call results or code execution) to assess its progress. Agents can then pause for human feedback at checkpoints or when encountering blockers. The task often terminates upon completion, but it’s also common to include stopping conditions (such as a maximum number of iterations) to maintain control.

── Anthropic「Building effective agents」(2026年8月28日取得。訳:実行中、エージェントが各ステップで環境から「ground truth(事実としての手がかり)」を得て、自分の進み具合を判断できることが決定的に重要です。エージェントはチェックポイントで、あるいは行き詰まったときに、人のフィードバックを待って止まることができます。タスクは完了時に終わることが多いですが、制御を保つために、反復回数の上限のような停止条件を入れておくのも一般的です)。※この一節は省略せずに引用しています。

この一節から、私たちは3つに整理しました。各ステップで事実としての手がかりを得ること、エージェントが人に返して止まる場所(checkpoints、および行き詰まったとき)、そして停止条件(stopping conditions)です。原文はこれらを数え上げてはいません。3つに束ねたのは私たちです。

停止条件が設計項目として名指しされている点は、費用の話と地続きですこの接続は私たちの読み方です。原文が挙げている理由は「to maintain control(制御を保つため)」であって、費用ではありません)。回数の上限を決めていなければ、うまくいかないときほど呼ぶ回数が増えます。「どこまでやったら人に返すか」は、精度の問題ではなく、先に決めておく設定です。

決めることAnthropicの記述(原文)決めていないと何が起きるか
各ステップの手がかり「gain “ground truth” from the environment at each step (such as tool call results or code execution)」(各ステップで環境から事実としての手がかりを得る。ツール呼び出しの結果やコードの実行など)進んでいるのか止まっているのかを、本人も運用側も判断できない
エージェントが人に返して止まる場所「Agents can then pause for human feedback at checkpoints or when encountering blockers」(チェックポイントで、あるいは行き詰まったときに、人のフィードバックを待って止まれる)誤ったまま先に進む。戻す場所が無い
停止条件「it’s also common to include stopping conditions (such as a maximum number of iterations) to maintain control」(制御を保つために、反復回数の上限のような停止条件を入れておくのも一般的)制御が保てない。打ち切る地点が無く、うまくいかないときほど呼ぶ回数が増える

出典:Anthropic「Building effective agents」(2026年8月28日取得)。「決めていないと何が起きるか」の列は私たちの整理で、このページに書かれているものではありません。ツールとは、検索や社内システムなど、LLMが呼び出して使う外部の機能のことです。レイテンシ(latency)とは、指示を出してから返ってくるまでの時間のことです。日本語は私たちの訳です。

AIエージェントの導入は、どこから決めればよいのか

ここからは私たちの進め方です。すでに動かしている場合も、決め直せます。3つあります。

  • いま作ろうとしているものが、どちらなのかを言葉にする。経路を人が先に決めているならワークフロー、LLMがその場で決めるならエージェントです。呼び方が揃っていないまま見積を取ると、各社が別のものを見積もることになります
  • 単純な側を先に作って、測る。Anthropicの記事が「より単純な解では足りないときにだけ」と書いています。すでにチャットボットが動いているなら、それが比較の土台になります。足りない点を1つ挙げられる状態にしてから、次を足します
  • 人に返して止まる場所と、停止条件を、作る前に決める。エージェントが人に確認を求める地点はどこか、何回で打ち切るか。あとから足す設定ではなく、費用の見積そのものに関わります

入れるかどうかより、どこを固定してどこを任せるかに判断が寄ります。そして私たちの見方では、渡すデータの形を先に決めておく順番は、AIに限らず他のツールでも同じです。器を入れる前にデータの形を決める話はBrazeを使いこなせないのは、機能の問題ではないで、何を資産と呼ぶかを先に決める順序は顧客資産化の設計順序で扱いました。

よくある質問

AIエージェントとワークフローは、何が違うのですか?

経路を誰が決めるかが違います。Anthropicは「Workflows are systems where LLMs and tools are orchestrated through predefined code paths」(ワークフローとは、LLMとツールが、あらかじめ定義されたコードの経路を通じて組み立てられているシステムです)、「Agents, on the other hand, are systems where LLMs dynamically direct their own processes and tool usage」(一方でエージェントとは、LLMが自らの処理とツールの使い方を動的に決めていくシステムです)と書いています。これは業界共通の定義ではなく、Anthropicがこの記事の中で使っている定義です。(出典:Anthropic「Building effective agents」/2026年8月28日取得)

AIエージェントにすると、処理は速くなりますか?

速くなるとは書かれていません。Anthropicは「Agentic systems often trade latency and cost for better task performance, and you should consider when this tradeoff makes sense」(エージェント的なシステムは、より良いタスク性能と引き換えに、レイテンシと費用を差し出すことがよくあります。このトレードオフが理にかなうのはどんなときかを考える必要があります)と書いています。レイテンシとは、指示を出してから返ってくるまでの時間のことです。速さと費用を差し出して性能を取る、という向きで書かれています。(出典:Anthropic「Building effective agents」/2026年8月28日取得)

チャットボットから作り直したほうがよいですか?

そうとは書かれていません。Anthropicは「Start with simple prompts, optimize them with comprehensive evaluation, and add multi-step agentic systems only when simpler solutions fall short」(単純なプロンプトから始め、網羅的な評価でそれを最適化し、より単純な解では足りないときにだけ、複数ステップのエージェント的システムを足してください)と書いています。すでに動いているものは、足りているかどうかを判断するための比較の土台になります。これは私たちの読み方です。(出典:Anthropic「Building effective agents」/2026年8月28日取得)

AIエージェントの費用は、何で決まりますか?

このページに金額の記載はありません。書かれているのは「レイテンシと費用を、より良いタスク性能と引き換えに差し出すことがよくある」という関係だけです。LLMが次に何をするかを決めるたびに呼び出しが起きるため、呼ぶ回数が増えれば費用も増えます。これは私たちの説明で、このページに書かれているものではありません。だからこそ、同ページが挙げている停止条件(「maximum number of iterations」=反復回数の上限)が、費用の話と地続きになります。ただしこの接続は私たちの読み方です。原文が停止条件の理由として挙げているのは「to maintain control(制御を保つため)」であって、費用ではありません。(出典:Anthropic「Building effective agents」/2026年8月28日取得)

作る前に決めておくことは何ですか?

Anthropicの記事は、実行中の設計として各ステップで環境から「ground truth(事実としての手がかり)」を得ること、チェックポイントや行き詰まったときにエージェントが人のフィードバックを待って止まれること、制御を保つための停止条件(反復回数の上限など)を書いています。これを3点に整理したのは私たちで、原文が数え上げているわけではありません。止める場所と停止条件を先に決めるという進め方も、私たちのものです。(出典:Anthropic「Building effective agents」/2026年8月28日取得)

出典

・Anthropic「Building effective agents」ページを見る ── ワークフローとエージェントの定義/エージェント的なシステムはレイテンシと費用を性能と引き換えにすることがよくある/単純なプロンプトから始め、より単純な解では足りないときにだけ足す/実行中に環境から事実としての手がかりを得ること・チェックポイントや行き詰まったときにエージェントが人のフィードバックを待って止まれること・制御を保つための停止条件(反復回数の上限など)/成功の鍵は性能を測り実装を繰り返し直すこと。2026年8月28日に取得
本稿の事実は、上記1ページから取っています。他ページの記述を根拠にした箇所はありません。
ここで引いた定義は、業界共通の定義ではありません。Anthropicがこの記事の中で使っている定義です。本稿でもそのように扱いました。
本稿に金額は出てきません。このページに金額・トークン単価の記載はありません。
「LLMが次を決めるたびに呼び出しが起きるので、回数が増えれば時間も費用も増える」は私たちの説明です。このページは費用とレイテンシのトレードオフを述べているだけで、この因果を書いているわけではありません。
実行中の設計を3つに束ねたのは私たちで、原文はこれらを数え上げてはいません。
停止条件を費用の話と結びつけたのは私たちの読み方です。原文が停止条件の理由として挙げているのは「to maintain control(制御を保つため)」です。
「経路を誰が決めるか」という言い換え、「追いやすさ/対応力」の2列の整理、「止める場所と停止条件を先に決める」という進め方は私たちのものです。
※ このページは英語のみで、日本語版は確認できていません。日本語はすべて私たちの訳です。判断に関わる箇所は原文を併記しました。

執筆者

永野 陽平

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